研究について

研究について

iPS細胞を用いた小児希少難病疾患の病態・病因の解明、創薬研究

竹谷 健

医学の進歩により、多くの難病の病態が明らかとなり、画期的な治療法も開発されつつあります。しかし、子どもの難病は、 その多くが希少疾患であることから、取り組む研究者が非常に少なく、研究への支援も十分ではないので、病気の研究が遅 れています。また、その病態を再現できる方法が極めて困難であるため、特に、中枢神経系や骨格筋系、消化器系などは組 織を採取することが難しいため、ヒト以外の動物を用いて研究していますが、ヒトの病態を正確に再現するができませんで した。このような状況下で、希少疾患を持った子どもたちは、現在でも、致死的な経過をとるか、著しく日常生活が障害さ れています。

最近、ヒトの皮膚や血液などの細胞に、少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する 能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞が開発されました。この細胞が、人工多能性幹細胞 (induced plu ripotent stem cell:iPS細胞)です。

iPS細胞の開発により、難治性疾患の患者さんの細胞からiPS細胞を作り、それを神経、心筋、骨、肝臓などの病気の主座 である細胞に分化させ、その患部の状態や機能がどのように変化するかを研究し、病気の原因を解明する研究が行えるよう になりました。また、その細胞を利用すれば、ヒトへ投与する前に薬剤の有効性や副作用を評価する検査が可能になり、新 しい薬の開発が飛躍的に進むことが期待されています。

現在、小児難治性疾患の患者さん数人から、iPS細胞の作成に成功して、骨や心筋、神経に分化させて、病態解明および創薬 研究を行っています。今後、治療法がなく苦しんでいた難病の子どもたちに、幸せな生活を届けられるように研究を進めていきます。