医局のご案内
教授あいさつ
超少子高齢化が島根県だけでなく日本全体で進んでおり、今後、人口動態が急速に変化していくことが予想されています。 医療においても、診断技術および新規治療法は進歩し続けていますが、医療倫理および医療コストの対策が十分に進んでいない現状があり、医療の均てん化の面から実際の診療を行う上で大きな問題となっております。また、近い将来、医療用ロボットや人工知能が実際の診療に導入される可能性が高いことから、医療をとりまく状況は大きな変革が起きることは間違いありません。さらに、これから医師を含めた医療従事者の育成の観点からも、社会のニーズに迅速かつ適切に対応した新たな教育システムが構築されつつあります。
このように、全てにおいて変革が求められる時代に、島根県の子どもたち、ひいては日本全国、世界中の子どもた ちが病気を持ちながらでもヒトとして、家族と一緒に幸せに生きていけるように、島根大学医学部小児科は、「一人のこどものために、今できることを、そして将来の幸せのために-For one child, For a moment, For the future-」 をモットーに努力していきます。
まず、大学病院の小児診療の充実に取り組んでいきます。幅広い小児領域、新生児、神経、循環器、消化器、呼吸器、 感染・アレルギー、腎臓、膠原病、腫瘍・血液、内分泌代謝疾患の全ての分野において、外科系診療科とも連携して、世界標準の医療を提供します。また、若年成人およびキャリーオーバーした患者さんに対する診療連携を強化して、小児から成人までを意識した医療を行います。
次に、島根県内の小児医療を充実させるために、地域的にも時間的にもシームレスな医療の提供を行います。 具体的には、各医療機関、行政、教育機関などとの連携を強化して、必要な小児医療を把握し、迅速かつ適切な医療を提供します。また、周産期医療を強化するために、特にハイリスク患者さんへの診療を重点的に行い、産婦人科、 外科系診療科、臨床遺伝疾患診療部と連携し、地域周産期母子センターとしての機能を高めます。さらに、地域に根ざした医療を提供し、小児の栄養・発育発達などの小児保健にも関連した諸問題を解決します。
卒前教育として、医療人としての知識だけでなく、心構え・熱意を伝えます。記憶に頼らない論理的な講義をして、記憶に残す講義を行い、小児科で行っている取り組みや研修システムを具体的に提示して、島根県で働く素晴らしさ、小児科医の使命を伝え、島根大学/島根県で働く医療人が増えることに貢献します。また、外来病棟実習では、こどもたちと一緒に接する時間を増やして、病気だけでなく子ども自身を学ぶ機会を作ります。さらに、医学の進歩無くして、医療の進歩がないことを伝え、医学部早期からの医学研究へ参加する環境整備を行います。
卒後教育として、グローバルな視点をもった地域医療人の育成に取り組んでいきます。初期研修医の方々には、自分で自分の道を切り開いていける医師に育ってもらうように指導し、小児科後期研修医の方々には、全人的および包括的な小児医療を行う力を養ってもらえるように教育します。また、メディカルスタッフの皆さんに対しては、病院全体の連携体制および診療技術の向上に貢献していただけるように、専門技術所得の支援などを積極的に行います。
キャリアプランとして、小児科後期研修終了後に、小児科専門医を取得していただきます。その後、新生児、神経、 循環器、血液腫瘍、内分泌、アレルギーなどの専門医及び医学博士の取得を目指して取り組んでいただきます。 その中で、女性だけでなく、男性に対しても、ひとりひとりの状況に合わせた個別のキャリアプランを作成して、すべてのスタッフが仕事だけでなくプライベートも充実できるように支援します。
研究に関して、稀な病気を持った子どもたちやその家族は診断もされず、有効な治療法もないために、 心身ともに苦しい毎日を過ごしておられます。 我々は、希少疾患の子どもたちに寄り添い、患者さんに還元できる研究を行うことを目標にして、iPS細胞を用いて小児希少難病疾患の病態・病因の解明を行い、創薬研究を行っていきます。また、希少難病の根治療法を確立するために、間葉系幹細胞などの幹細胞を用いた細胞治療技術の開発を行っていきます。さらに、日常診療において、小児科のすべての分野(新生児、神経、循環器、消化器、呼吸器、感染・アレルギー、腎臓、膠原病、腫瘍・血液、内分泌代謝疾患、小児保健など)における診断治療に関する臨床研究を推進します。
これらの目標を確実に達成するために、島根大学医学部小児科は、大学病院で働く小児科医だけでなく、島根県内で働くすべての小児科医と一致団結して、島根県を1つの小児科学講座として、小児科の使命を心に留め、全てに熱意を持って全力で取り組んでいきます。患者さん・ご家族が信頼していただける診療ができるように、島根県で世界基準の小児医療を一緒に行ってもらえる小児科医が増えるよう、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。