研究について

研究について

極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損の正確な診断指標の検討

1. 研究の対象となる方

1994年1月から2015年12月の間に島根大学医学部小児科で極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症と診断された方(罹患者)、または罹患者の家族や精密検査で「保因者(罹患者は遺伝子異常が2つあるのですが、一つだけ遺伝子異常が見つかった人)」と診断された方、および、2015年7月~9月の期間に島根大学小児科で血中アシルカルニチン分析を依頼された方。

2. 研究の目的・意義

VLCAD欠損症の患者さんは先天的(生まれながら)に脂肪酸が分解できず、脂肪からのエネルギーを作ることが出来ません。そのため、低血糖、心筋症、筋痛・横紋筋融解症、肝機能障害といった様々な症状を呈します。ひどい時には突然死や急性脳症をきたすこともありますが、適切な食事指導などによってこれらの症状を予防することが可能であり、現在は新生児マススクリーニング検査で、出生後早期に診断できる病気です。
その診断には血中アシルカルニチン分析という特殊な血液検査が用いられています。その検査でテトラデセノイルカルニチン(以下、C14:1)と言う診断マーカーが上昇しているとVLCAD欠損症を強く疑うことになります。ところが、C14:1はVLCAD欠損症の患者さん以外でも上昇することがあります。具体的にはVLCAD欠損症の保因者(上述の通り、遺伝子変異が2つあって患者になるのですが、一つだけ遺伝子変異をもつ方を保因者と呼びます。一般に患者さんの両親や一部の兄弟などが該当しやすいです)や、哺乳不良や栄養障害などがある場合です。つまり、C14:1の数値だけでVLCAD欠損症と診断することは出来ず、診断には更に詳しい検査が必要になります。しかし、これらの検査は特殊であり、一部の研究機関でしか行われていません。また、検査で見逃しがあってはならないのですが、見逃しを少なくしようとすると、必然的に保因者や哺乳不良といった「本当は患者ではない人」が病気を疑われること(偽陽性)が多くなるため、C14:1に変わる精度の高い診断マーカーが望まれています。
本研究では、C14:1に変わる診断指標として、海外では有効性が示唆されている「C14:1/C2比」、「C14:1/C12:1比」、「C14:1/C16比」といった新しい診断マーカーの精度を調べ、どの診断マーカーが適切なのかを検討します。

3. 研究の方法

上述の診断マーカー(C14:1、C14:1/C2比、C14:1/C12:1比、C14:1/C16比)について各々の精度(感度、特異度など)を調べ、比較します。また、これらのマーカーが患者さんの重症度で異なるのかどうか、重症度ごと、保因者、対照群でそれぞれ平均値や数値の広がり(分布)などを比較検討します。
これらの検討をするために、血中アシルカルニチン分析結果以外に、患者さんの場合、遺伝子変異や重症度を判定するための臨床情報(発症年齢や症状、転機など)を当教室に保管されているデータベースから抽出します。患者さん以外からは臨床情報を抽出せず血中アシルカルニチンのデータだけ利用します。これらの情報は全て匿名化して取り扱いますが、患者さんについては臨床情報から重症度を判定するため、匿名化はするものの対応表を作ります。これらの個人情報はパスワード管理やアクセス制限を設けて、個人情報の保護に努めます。

4. 研究の期間

2019年6月~2020年3月

5. 研究組織

この研究は島根大学医学部小児科学講座が行います。
研究代表者(研究で利用する情報の管理責任者):
島根大学医学部小児科学講座  山田健治

6. 情報の利用停止

ご自身の情報をこの研究に利用してほしくない場合には、ご本人または代理人の方からお申し出いただければ利用を停止することができます。
ただし、対照群(2015年7~9月に血中アシルカルニチン分析を依頼された方)は完全に匿名化しており、個人を特定できないため、利用停止の要望に添えません。また、利用停止のお申し出は、2019年10月までにお願いいたします。それ以降は解析・結果の公表を行うため、情報の一部を削除することができず、ご要望に沿えないことがあります。

7. 相談・連絡先

この研究について、詳しいことをお知りになりたい方、ご自身の情報を研究に利用してほしくない方、その他ご質問のある方は次の担当者にご連絡ください。

研究責任者: 島根大学医学部小児科学講座  山田健治
〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1
電話 0853-20-2219  FAX 0853-20-2015