研究について

研究について

脂肪酸代謝異常症の代謝クライシスにおける低体温療法の実施可能性の検討

1. 研究の対象となる方

下の1)〜2)の条件を共に満たす患者さんが研究対象となります。

1) 1993年以降から2018年12月までの間に、島根大学への先天代謝異常症の診断依頼、あるいは代謝機能分析などの依頼があった患者さん。

2) 島根大学小児科学教室(当教室)に皮膚線維芽細胞などの既存試料や臨床情報が保管されている患者さん。

存命されている方、亡くなった方のいずれも対象となります。
病歴や検査結果で先天代謝異常が明らかに否定的な患者さんは対象となりません。

2. 研究の目的と方法、研究の意義

人は食事の糖分や体の中に蓄えた糖分をもとにエネルギーを作ります。しかし発熱などで体がエネルギーを普段より必要としたり、嘔吐などでエネルギーの摂取がうまくいかないときには、次のエネルギー源として脂肪が使われます。脂肪酸代謝異常症は脂肪をエネルギーに変換する酵素の一部が働かなくなくなるため、体がエネルギー不足に陥り、様々な症状がでる病気です。

重度のエネルギー不足(代謝クライシス)になってしまった時は病院で点滴をはじめとした集中的治療が必要になります。集中的治療の一環として、発熱時には積極的解熱(高体温の状態を普段の体温まで下げる治療)が行われることがあります。また、平熱よりも低体温の方がエネルギー代謝にとってよい可能性があるとも言われていますが、まだ十分には証明されていません。

本研究では上に述べた発熱時の積極的解熱や低体温療法(高体温の状態を平熱より低い体温まで下げる治療)の実施の可能性を調べる研究を行います。脂肪酸代謝異常症の患者さんの細胞を用いて、細胞を培養する際の温度を変化させることで、発熱や積極的解熱、低体温療法の環境を作ります。それによって脂肪がエネルギーに変化する過程が改善するかを調べます。今回の研究で改善がみられるようであれば、平温療法や低体温療法が脂肪酸代謝異常症の代謝クライシス時に有効である可能性が示唆され、今後の治療に生かすことができると考えられます。

3. 試料と情報の管理

本研究には患者さんの発症年齢、病名、症状、臨床経過、遺伝子検査結果などの情報を用います。この情報以外(氏名など)の個人情報は匿名化し、他のデータと切り離して管理します。保存している情報は当教室で厳重に管理いたします。
また、研究によって得られた結果は専門の学会や雑誌に発表する予定ですがその際も患者さんやご家族の個人を特定できる情報は一切使用いたしません。本研究の成果を患者さん個人にご報告することはございません。
本研究は当教室で保有している試料・情報のみを用いて行うため、新たに患者さんから試料の採取や病歴の調査を行うことはありません。

4. 研究の期間

2019年4月〜2020年9月

5. 試料・情報の利用停止

ご自身やお子様が研究対象者である可能性があり、本研究における試料や情報の利用に同意いただけない場合は下記までご連絡ください。同意を頂けない場合でも、不利益が生じることはございません。ただし、本研究で取り扱う情報の多くは匿名化されており、個人が特定できない場合には試料・情報の利用を停止できない可能性が高いです。また、2020年3月より研究データの解析を行う予定であり、以後は情報の削除が難しくなります。専門の学会や雑誌などに公表を行った後も同様に、情報の一部を削除することができず、ご要望に沿えないこともあります。

6. 相談・連絡先

この研究について、詳しいことをお知りになりたい方、その他ご質問のある方は次の担当者(研究責任者)にご連絡ください

島根大学医学部小児科学講座 大澤 好充
〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1
電話 0853-20-2219  FAX 0853-20-2215