研究について

研究について

脂肪酸代謝異常症に対するペマフィブラートの有効性の評価

1. 研究の対象となる方

1994年1月から2018年12月の間に島根大学医学部小児科で脂肪酸代謝異常症[極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)欠損症、グルタル酸血症2型(GA2)]と診断された患者のうち、皮膚組織(皮膚線維芽細胞)を提供されたもの、および上記期間で当教室に診断診断依頼があったものの、脂肪酸代謝異常症を否定されたもの(後者は比較対象群として任意の3例)。

2. 研究の目的・意義

脂肪酸代謝異常症の患者さんは先天的(生まれながら)に脂肪酸が分解できず、脂肪からのエネルギーを作ることが出来ません。そのため、低血糖、心筋症、筋痛・横紋筋融解症、肝機能障害といった様々な症状を呈します。ひどい時には突然死や急性脳症をきたすこともありますが、脂肪酸代謝異常症には治療薬がありません。多くの場合、適切な食事指導などによって発症を予防することが可能ですが、中には病状が悪くなる患者さんもおられます。
近年、べザフィブラートと言う高脂血症の薬が脂肪酸代謝異常症にも効くかもしれない、と言われて様々な研究がなされました。しかし、結果的には患者さんの病状を充分に改善させる薬剤ではないかもしれない、と考えられています。
今回の研究では、ベザフィブラートに似たペマフィブラートという薬が患者さんの細胞内で、脂肪酸代謝を改善させるかどうかを調べます。ペマフィブラートは2018年6月に高脂血症の薬として発売されましたが、ベザフィブラートより優れた薬効をもつ部分があり、もしかしたら脂肪酸代謝異常症の患者さんにもベザフィブラート以上に有効かもしれません。
もしも細胞レベルでペマフィブラートが脂肪酸代謝異常症に有効だとすれば、いずれは患者さん自身を対象とした治験へと繋がり、「脂肪酸代謝異常症の特効薬」として実際に使われるようになる可能性があります。

3. 研究の方法

患者さん及び比較対象群の細胞(皮膚線維芽細胞)にペマフィブラートを添加して培養して、脂肪酸の分解が促進されるかどうかを調べます。
具体的には以下の2つの方法で脂肪酸の分解がどの程度なのか評価します。一つはIVPアッセイ(In vitro prove acylcarnitine assay)と言う評価方法です。細胞を意図的に飢餓状態で育ててから、特定の脂肪酸を加えます。お腹の減った細胞はすぐに脂肪酸を分解してエネルギーを作り出そうとしますが、患者さんから採取した細胞では脂肪酸をうまく分解できず、不完全に分解された脂肪の代謝産物が蓄積します。これを調べることで、脂肪酸代謝に関わるどの酵素がどの程度障害を受けているのか推測できます。ペマフィブラートを加える前後で、不完全に分解された脂肪の代謝産物がどのように変化するのか調べることで、ペマフィブラートの有効性を判定します。
もう一つの方法はFAOフラックス(Fatty acid oxidation flux)という方法です。脂肪は最終的に水とエネルギー(ATP)へと分解されるのですが、エネルギーを直接測定することは難しいです。そこで水を測定するのですが、水も元々細胞内に含まれています。脂肪酸由来の水だけを測定するため、トリチウム(三重水素)というマーキングされた水素(3H)が含まれた脂肪酸を添加して細胞を培養します。この脂肪酸は最終的にトリチウムの入った水(3H2O)へと分解されますが、トリチウムが入っているため、この3H2Oだけを測定することが出来て、脂肪酸がどの程度代謝されたのかを分析できます。ペマフィブラートの有無で、細胞中の3H2O濃度がどのように変化するのか調べて、ペマフィブラートの有効性を評価します。

4. 研究の期間

2019年6月~2021年3月

5. 研究組織

この研究は島根大学医学部小児科学講座が行います。
研究代表者(研究で利用する試料・情報の管理責任者):
島根大学医学部小児科学講座  山田健治

6. 試料(検体)・情報の利用停止

ご自身の情報をこの研究に利用してほしくない場合には、ご本人または代理人の方からお申し出いただければ利用を停止することができます。利用停止のお申し出は、2020年10月までにお願いいたします。それ以降は解析・結果の公表を行うため、情報の一部を削除することができず、ご要望に沿えないことがあります。

7. 相談・連絡先

この研究について、詳しいことをお知りになりたい方、ご自身の試料(検体)・情報を研究に利用してほしくない方、その他ご質問のある方は次の担当者にご連絡ください。

研究責任者: 島根大学医学部小児科学講座  山田健治
〒693-8501 島根県出雲市塩冶町89-1
電話 0853-20-2219  FAX 0853-20-2015